春の薬酒果実酒作り(3月~5月)

春は芽吹きの季節、待ちに待った花と新緑の季節です。果実酒としては、山菜や野草・ハーブ類・樹木の花など、おもに果実以外の部位を漬け込むことが多くなります。果実ではなんといってもイチゴで、一部の晩柑類もあります。漢方で春は、冬に溜まった毒素が人体の活動とともに動き出す季節といわれます。解毒が求められ、肝経の負担が多くなりますから、肝経や排出に関わる腎経を補う薬膳・薬酒がおススメです。

花酒について

■基本の漬け方
花酒の特徴は、なんといってもその香りです。味はほとんど期待できませんが、花香の精油成分をアルコールに溶かして封じ込めた花酒は、グラスに注いだ瞬間、あるいは口に含んだ刹那、一気に花を開きます。
●ポイントは3点。★その1:なるべく水洗いしなくてもよい花を漬けること。つまりきれいな場所の汚れてない花ということです。水洗いする場合も、さっと水をくぐらせ、すぐにペーパータオルなどで水気をとって漬け込むこと。微妙な香りが命なので、花を摘むのは香りが飛び出す前の早朝がベストです。また、一度に摘めない場合は、何回か漬け込みを繰り返すことも可能です。ものにもよりますが、基本的には咲き始めの5分咲きくらいの花を摘みましょう。★その2:香り成分は原酒にすぐに移行するので、漬け込み期間は2.、3日~1週間以内とし、すぐに濾すこと。香りが足りなければ、何回か漬け込みを繰り返せばよい。★その3:花は重さがほとんどないので、漬け込み分量は重さではなく容量(目分量)で決める。水分の付着や乾燥状態で重さは大きく異なりますから、重さに頼らないこと。花は香りの強さや成分によって容量は変わりますが、原酒を注いで半分~2/3くらい、場合によっては満杯に入れてもいいと思います。

春の果実酒(3~5月)

■イチゴ酒
 
■イチゴ酒:イチゴはバラ科の多年草で、和名はオランダイチゴ。世界中で栽培されますが、日本は生食の比率が特に高く、山上げ・電照加温による促成栽培が全国的に行われています。露地栽培の場合は4~6月が収穫時期になります。イチゴ450g/35度ホワイトリカー900ml/砂糖75g/レモン1個分(お好み)。イチゴは赤く香りの強い品種がよい。ヘタを取って半分に切る。レモンは白い皮が残らないように皮を厚く剥き、身をスライスして入れる。酸味の強い品種なら入れなくてもよい。漬け込み後1~2週間で濾すこと。2ヶ月以内に飲みきらないと色や香りがガクッと悪くなってきます。特に光に要注意。甘い、まさに春の香りという美酒です。

花酒類
●梅花・桃花・八重桜・ウワミズザクラ・春ラン・石斛・沈丁花・コブシ・スミレ・バラ・ノバラ・キンセンカ・カモミール・スイカズラ・ニセアカシア・などなど多種多様な花酒の中から、いくつか紹介します。
 
■梅花酒:バラ科果樹の先陣をきって咲く梅の花。繊細な香りを酒に閉じ込めたいですね。咲き始めの花を摘んで漬け込みましょう。水洗いはしません。25~35度の原酒に対して7分目以上入れましょう。1週間で濾して仕上げます。甘味はお好みですが、少なめがいいでしょう。入れなくてもかまいません。
■八重桜酒:バラ科サトザクラの花蕾。一般には桜湯や和菓子などに使う塩漬けの桜花で知られる。開きかけの蕾から半開きの花がよい。水洗いはしない。25~35度の原酒に対して7分目前後入れる。1週間で濾して仕上げます。甘味は少なめで(50~80g/1800ml)、入れなくてもいいでしょう。
■石斛花酒:ラン科セッコク(デンドロビウム)属の可愛いランで、東洋ランや山野草ファンには馴染みの花です。開いて間もない花を摘んで漬け込みましょう。25~35度の原酒に対して3分目前後入れます。香りの強い品種がよく、水洗いはしません。2週間くらいで濾して仕上げます。甘味は少なめに。
 
■野薔薇酒:バラ科バラ属の野生バラ。一般的にはノバラで知られます(正式名はノイバラ)。咲き始めのきれいな花だけを摘んで漬けます。25~35度の原酒に対して7分目前後、気になる場合は水に浸してすぐにザルにとり水を切って漬ける。1週間で濾して仕上げる。甘味は少なめに。
■ウワミズザクラ花酒:バラ科サクラ属の高木で、ブラシのような花をつけます。咲き始めの蕾のものを軸ごと摘んで漬け込みます。25~35度の原酒に対して6分目前後で漬け込みます。1~2週間で濾して仕上げます。甘味は少なめに。蕾を塩漬けにしたものはアンニンゴ(安仁子)と呼ばれ食用にされる。
 
■カモミール酒:キク科カミツレ属の1年草(ジャーマン・カモミール)。新鮮な花は甘いリンゴのような香りがあり、ハーブティーでも有名な花。安眠効果があり、ドイツでは赤ちゃんにも飲ませる。花柱が伸びていない新鮮な花がよい。35度の原酒に対して5分目前後を漬け込む。1~2週間で濾して仕上げる。
■スイカズラ酒:スイカズラ科のつる性常緑低木。花は甘い芳香があり、初め白くて古くなると黄色く変色するので、漢方では金銀花と呼ばれ、解熱・消炎・利尿薬として浄血・関節痛・腫れ物などに用いられる。35度の原酒に対して4分目前後の生花を漬け込む。1週間で濾して仕上げる。

■ハーブ酒
 
■タイムワイン:シソ科の常緑小低木。魚に合うハーブとして知られ、煮込み料理などにも多用される。若い茎葉を漬け込むが、出来れば花の時期に花ごと漬けたい。原酒は赤ワインと35度ホワイトリカーを半々にブレンドしたものを用い、原酒の半分ほどの量で漬け込むが、薬効を期待して増やしてもかまわない。甘味は少なめで、50g/720mlくらいがおススメ。1週間で濾して仕上げる。
■セージワイン:シソ科の常緑小低木。クセのある肉や内臓肉料理などでよく使われるハーブ。香りが強いので、味を重視すると少なめの調合になるが、薬効を考えると原酒に対して5分目くらい加えて漬けたい。原酒の調合、甘味はタイムワインと同じ。1週間で濾して仕上げる。
 
■ミント酒:シソ科ミント(メンタ)属。ミントの仲間は多くの種類があるが、メントールを多く含むペパーミント・スペアミント・ニホンハッカが一般的。製菓原料に多用され、芳香剤・医薬原料としても使われる。35度の原酒に対して7分目前後で漬け込む。そのまま飲む場合は、甘味のほかにレモンなどで酸味をつけてもよい。ブレンドに使う場合はミントだけの方が便利。2週間で濾して仕上げる。果汁とブレンドすると夏の癒しにグッドです。
■ポット・マリーゴールド酒:キク科トウキンセンカの花で、ハーブではカレンデュラとも呼ばれる。薬用ハーブとして、利尿・発汗・通経・胆汁分泌促進などに用いられる。花弁だけを摘んで用い、35度の原酒に対して1/3前後で漬け込む。若干苦味があるので、甘味を加えた方が飲みやすい。1~2週間で濾して仕上げる。

野草・山菜・薬草酒

 
サルノコシカケ科キノコの酒
■カキドオシ酒:シソ科の多年草。春先は斜めに伸びて花をつけ、その後節間が伸びて横に這い、数m伸びる。垣根を通り抜けるということで、垣通(カキドオシ)の名がついた。漢方では連銭草(レンセンソウ)と呼び、清熱・利尿・鎮咳・消腫の効があるといわれ、生活習慣病予防にも期待される。春先の花の付いた茎ごと刈り取って用いる。ビンに生の茎葉を入れ、35度の原酒をひたひたに注いで漬け込む。1~2週間で濾して仕上げる。
■タンポポ酒:キク科タンポポ属の多年草。いろんな種類があるが、すべて利用できる。一般にはびこっているのは年中咲いているセイヨウタンポポで、フランスではダンデリオンと呼ばれ、若葉をサラダ野菜などにする。ハーブとしては、根茎を干して焙煎したものをタンポポコーヒーとしてお茶にする。根ごと堀り上げてよく水洗いし、水気を切って漬け込む。根は刻んだ方が早く仕上がる。全草をビンに入れ、35度の原酒をひたひたに注いで漬け込む。1~2ヶ月経ったら濾して仕上げる。
 
■タラノキ酒:ウコギ科タラノキ属の落葉低木。春の山菜の王様と言われるタラノメは胡麻和えや天麩羅で美味しい。生薬としては根の皮を乾燥したものをタラコンピと称し、民間的に糖尿・腎臓炎・胃潰瘍に用いる。ここでは茎と若芽をカットして漬け込む。ビンにカットした茎と若芽を入れ、35度原酒をひたひたに注いで漬け込む。甘味は加えない方がよい。3ヶ月くらいしたら濾して仕上げる。なお、トゲがあるので注意すること。樹皮を剥いて乾燥させてから漬けると早く仕上がる。
■ヤマウド酒:ウコギ科タラノキ属の多年草。ヤマウドという種はなく、ウドの野生のものあるいは軟白栽培してないものを、軟白ウドと区別して呼ぶ。春の香りを食べる山菜として人気があり、酢味噌和え・天麩羅・煮つけ・キンピラなどで美味しい。漢方では和独活(ワドッカツ)といい、根茎を乾燥させて用いる。発汗・解熱・鎮痛作用が知られ、風邪予防・頭痛・リウマチ・神経痛・関節炎など有効で、強壮・疲労回復も期待できます。ヤマウド全体をスライスして300gに、35度原酒を600mlで漬け込み、1~2ヶ月経ったら濾して仕上げる。