薬膳について

薬膳というと、どうしても生薬を使った漢方臭いイメージを浮かべがち。でも、薬膳の基本は”旬”の食材を食べることにあります。ですから普通の料理でも、季節や体調に合わせて作れば、立派な薬膳料理といえます。ちょっとしたコツを覚えれば、簡単に出来ます。家庭薬膳料理で家族の健康を守りましょう。体は食材で作られます。季節の変化と体の変化を食材で調和させる薬膳料理で、未病を解消しましょう。

薬膳素材の選び方

一般食材が薬膳の基本素材です。これを陰陽五行説に則って分類し、状況に応じて調理すればよいのです。一番の基本は五味五性の五性です。体を温める素材か冷ます素材かということ。熱・温・平・涼・寒、に分けられ、熱:大いに温める、温:温める、平:温めも冷ましもしない、涼:冷ます、寒:大いに冷ます、となります。五味は季節に対応し、春は酸味、夏は苦味、土用は甘味、秋は辛味、冬は鹹味(塩味)、を食べるとよいということですが、日本と中国では気候に差があるので、全てをそのまま対応させるには問題もありますが、大体でいいでしょう。漢方生薬素材を使う場合は、帰経を考えるのが普通です。未病の部位・症状に応じて、肝・心・脾・肺・腎、の各経絡に入る素材を用います。そこに五味五性をリンクさせ、生薬の性質を加味して選びます。

四季に応じた素材

★植物素材の場合、春は葉物、夏は果菜、秋は種実・キノコ、冬は芋や根菜を食べるのが自然の薬膳です。現代は植物や魚介に旬や季節感がなくなり年中出回っていますが、自然との調和が薬膳の基本です。季節の安い素材が旬ですから、身体的にも経済的にもやさしい旬の素材を覚えて、賢い生活者になりましょう。
■春の素材
★春は、体が動き出す季節。冬に溜まった毒素を解毒・排出する素材を心がけて摂りましょう。肝経、目に気をつけましょう。
●青い葉っぱもの:油菜、菜花、小松菜、春キャベツ、春菊、セロリ、セリ、三つ葉、にら、パセリ、昆布
●山菜・野草:ふきのとう、山うど、タラノメ、タケノコ、タンポポ、よもぎ、ウコギ、スベリヒユ、しいたけ
●果物:柑橘類
(八朔、甘夏、グレープフルーツ、ポンカン)、いちご
●生薬:クコ、菊花、薄荷、ウコン

夏の素材
★夏は、体に熱が溜まりやすいので、体を冷ます素材を利用しましょう。また、体熱を発散させる香辛料もうまく取り入れましょう。夏野菜(ナス科・ウリ科の果菜)は水分補給が出来るとともに、体内に滞っている余分な水分を排出する利尿作用もあります。
●夏野菜:キュウリ、トマト、ナス、シシトウ、ズッキーニ、ピーマン、ニガウリ、トウガン
●果物:スイカ、メロン、スモモ、桃、梨、熱帯果実
●香辛料:ショウガ、唐辛子、シソ、ミョウガ、ニンニク、ハーブ類、シナモン、コショウ

■土用(季節の変わり目)の素材
★季節の変わり目は雨や湿気が多く、、胃腸に負担がかかり栄養吸収率が落ち体が衰弱しやすくなります。消化器系を補う(脾経に入る)生薬や消化吸収のよい食品で、体調の乱れを正しましょう。
●野菜:キャベツ、ニンジン、タマネギ、ニラ、サトイモ、カブ、カボチャ、アスパラガス、蚕豆、絹サヤ
●果物:梅、アンズ、木苺、ビワ、サクランボ
●生薬:山楂子(サンザシ)、ナツメ、茴香(ウイキョウ)、薬用人参、薏苡仁(ハトムギ)
★土用は春夏秋冬に各1回あります。雨や湿気が多いということで、日本では菜種梅雨、梅雨、秋淋、冬の雪、くらいに考えるとよいでしょう。旧歴で作られたものなので、今の太陽暦より1ヶ月ほど季節行事は遅れますが、その方が季節に合っているのです。桃の節句が4月なら、ちょうど花が咲くでしょう。

■秋の素材
★秋は、空気が乾燥し気温が下がってきます。体も乾いてきますから、潤す素材をたくさん摂りましょう。さらに気温も下がって体も冷え、風邪を引きやすくなります。温める素材もあわせて摂りましょう。芋やキノコ、旬の果物などを食べて体を守りましょう。
●野菜:大根、レンコン、百合根、サトイモ、サツマイモ、大豆、インゲン豆、白菜
●木の実・キノコ:ゴマ、ナメコ、白キクラゲ、キノコ全般、ギンナン、落花生、クルミ、栗
●果物:リンゴ、ブドウ、ナシ、ザクロ、
●生薬:枸杞の実、蓮の実、山楂子、竜眼肉、杏仁、松の実

冬の素材
★冬は、なんといっても寒さ対策です。栄養のあるものを食べてエネルギーを補いましょう。体を温める素材が中心です。根菜や滋養食材を選んで食べるようにしましょう。
●野菜:ネギ類、ヤマイモ、ニラ、昆布、大根、ゴボウ、黒胡麻、シイタケ、キクラゲ、黒豆、ニンジン、サトイモ、カブ、カボチャ、漬け菜
●果物:ミカン、金柑、カリン、リンゴ、キウィ、ユズ
●香辛料・生薬:唐辛子、生姜、コショウ、山椒、ニンニク、シナモン、茴香、薬用人参、ナツメ
●その他:黒米、もち米、エビ、羊肉、鯉、スッポン

現代社会の薬膳
★冷暖房が発達した現代は、夏でも冷房病、冬でもコタツでアイスクリームなんて当たり前。野菜や果物も、促成栽培や水耕栽培、周年栽培、南半球からの輸入などで、季節もなにもあったもんじゃない。体のバランスも狂ってしまうのが当然ですね。とはいえ、大きな流れは季節変化に支配されています。体を季節に合わせることが、薬膳的健康の基本です。その時々の変調は、冷えているのか熱が溜まっているのか、乾いているのか湿気や水分が溜まっているのか、などを判断して食材を選びましょう。

基本の薬膳料理

★薬膳の基本はお粥とスープです。さっぱりした日本風の白粥でもよいのですが、ここでは中国風のお粥を紹介します。
■基本の中国風粥:鶏ガラとネギ・生姜でスープをとり、濾して米を入れて炊き上げる。味付けは塩少々で。スープを取る時に生薬(人参など)や薬酒・紹興酒を加えてもよいし、米といっしょに蓮の実や緑豆・ハトムギなどを炊いてもよい。季節の野菜を加えたり、白髪ネギや枸杞などを飾れば見た目も美しい薬膳粥の出来上がり。ゴマ油やラー油をたらしても美味しい。
■基本のスープ:鶏ガラスープをとったら、季節の野菜やお好みの魚介や肉類をいれて、具沢山のスープに仕立てましょう。鶏ガラでなくても、お好みの魚介や豚骨・牛骨などのスープでもかまいません。リッチにスッポンスープベースとか、エビ・カニなどでもよいでしょう。スープを取る時に生薬を加えれば本格的な薬膳スープになります。

薬膳鍋はいかが

★なんでも入れてみんなで突っつく鍋は、出汁と素材に一工夫するだけで、簡単に薬膳料理に変身します。
■鶏の水炊き風:鶏ガラ・ニンニク・ショウガ・ネギに、薬用人参・ナツメ・陳皮(ミカンの皮)・茴香(フェンネル)等と紹興酒を加えて煮込み、濾してスープをとる。スープと薬用人参を鍋に戻し、鶏手羽・ぶつ切りの大根や山芋を加えて煮込み、塩・コショウ・山椒などで味を調え、更に水菜などの青味野菜を加えて仕上げる。具材も味付けもお好みなので、キムチ味でも味噌味でもアレンジしてみてください。

健康は食からと言われて久しいが・・・

●体を作るものは、口から入る飲食物です。光合成をしない動物は、それ以外にはありえません。質のよい身体は質のよい食品から作られる。まさに原因と結果の法則であり、因果律です。市販の弁当や惣菜、インスタント食品ばかりでは、食の偏りはもちろん、加工度の高い生気のない食材ばかりを摂ることになります。そもそも市場流通している食品には経済理論が働いているので、安い素材に流れがちです。食に気をつける第一歩は、自分で調理をすることです。生きた食材を簡単な加工で食べる。これが健康への近道。
●全体食という考え方には賛成です。肉でも、ロースやフィレばかりでは問題です。タン・ハツ・レバー・ホルモン・スジ肉・骨など、あらゆる部位を少しずつ丸ごと食べるように心掛けたいものです。魚は丸ごと食べられるイワシやサンマがおススメ。野菜も根・茎・葉全てを食べるように工夫してください。モッタイナイだけではなく、ケンコウとゲンキのためにも。